例外を想定するから使えるHACCP手順10(原則5)

手順9(原則5)では、計画を実行しているかどうか、チェックする仕組みを作る手順でした。
これで、HACCP計画が進められるわけですが、チェックをしていると、どうしても「基準外」が出てきます。
それをどうするのか、それが手順10です。
HACCPの手順全体については、こちらのブログをご参照下さい。
1.想定外を想定する
どんなに完璧なマニュアルがあっても、そのマニュアルから外れるもの、というのは多少出てきます。
HACCP計画で、基準となる数値を定め、チェックをしていれば、その数値から外れるものが出てくる可能性があります。
例えば、機械の故障による加熱不足や人為的な設定ミスによる加熱時間不足など、通常であれば、問題なく可能なことが、できない場合があります。
想定外なことです。
でも、HACCPはこの想定外も想定に入れてしまいます。
手順8で決めた基準の数値を下回っていた場合、どうするのか、を定めておくのが手順10です。
例えば、95℃5分加熱しなければならないところを、機械の故障で80℃でしか加熱されていなかった場合、その加工中のものはどうするのか、といった事を決めます。
再加熱して利用可能な食材であれば、前の工程に戻して再加熱するようにしたり、あるいは、再利用できないものであれば、廃棄、という選択もやむを得ないでしょう。
2.衛生管理の基準を守ることで、最小に食い止められる損害
手順9で、基準値を下回った場合、再利用すれば、また使うことができますが、再利用ができず、廃棄しなければならない場合もあります。そうなれば、原材料費など、会社にとっては損害になりますが、食中毒の危険がある製品を販売してしまう方がより大きな損害になります。
HACCP計画において決めた基準を下回る、ということは、食中毒の危険が高い状態になる、ということです。それをそのまま流通させてしまったら、流通過程で細菌が増殖し、食中毒になる危険性はより高くなります。
もちろん、その製品から食中毒が出てしまったら、会社の損害は計り知れません。作業工程の途中で、まだやりなおせる段階でストップをかければ、損害も少なくてすみます。
HACCPは、こうしたことからも、会社を守ってくれる盾にもなるものです。
3.想定外を想定することで、従業員が働きやすくなる
何かトラブルが発生した時、ベテランの従業員であれば、適切に判断して、素早く対処できるかもしれません。
しかし、常にベテランの従業員が張り付いていられる、とは限りません。新人、あるいは、経験の浅い従業員も担当しなければ、この人手不足な社会状況をなかなか乗り切れないことが多いと思います。
経験が浅い従業員が一番困るのは、基準を外れた時、想定外の出来事が起こった時です。どうしていいか分からず、余計に損害を広げてしまうかもしれません。
そこでHACCPです。
想定外を想定しておくことで、経験の浅い従業員でもトラブルに対応することができます。基準外の場合を決めておくというのは、働く人にとっては安心して作業をすすめることができます。
4.まとめ
HACCPは、衛生が保たれる基準を決めるだけでなく、その基準を外れた時の対応まで考えておく手順があります。これは、従業員にとっても作業しやすいマニュアルになります。