手順8(原則3)は、基準となるマニュアル作り

手順7(原則2)で、HACCPのメインとなる重要管理点(CCP)を決めたら、今度はそこを管理する方法を考える、という手順です。
CCPは、何としてもそこで食中毒の原因を食い止めなければならない部分なので、非常に重要なことを決めることになります。
決め方のポイントを説明します。
HACCPの手順全体については、こちらのブログをご参照下さい。
1.許容限界を決める
許容限界とは、それ以下の数値であれば、食中毒が発生してしまう、という値です。
例えば、製品を作る途中に、牛肉を加熱する工程があったとします。
牛肉には、0-157が混入する恐れがあり、それを防ぐためには、一定程度以上の温度で加熱しなければいけません。
通常、O-157は、中心温度が75℃1分以上であれば、危険がなくなります。
つまり、加熱時は、中心温度が75℃1分以上であることが、最低条件となります。
しかし、中心温度を1分間測定する、のは工程上できないこともあります。
そこで、例えば80℃で5分加熱した場合、製品の中に菌が残らないことを検査して確認していれば、80℃で5分という数値が、許容限界になります。
許容限界は、これくらいだろう、と決めるのではなく、これなら菌が無くなり、安全である、と科学的に確認できる数値にします。
こういったところが、HACCPが科学的根拠に基づいている、といわれる理由です。
自社で検査をするのは大変なので、そうした菌の検査をしてくれる専門会社に頼むということもできます。検査の結果が出れば、それを元に、加熱時間の限界値(それ以下にすると食中毒の危険がある値)を決めます。
2.重要管理点を守るための基準と、品質を守るための基準は違う
よく誤解されがちですが、重要管理点(CCP)で食中毒から守るために決める許容限界(最低基準)は、品質を守るために必要とされている基準とは、全く別物です。
品質を守るための基準は、先の牛肉の加熱においては、食中毒的には80℃5分で十分でも、品質(味)としては、95℃5分の方がいい、という場合があります。
会社のマニュアルとしては、品質を落とすわけにはいかないので、95℃5分の基準を作りますが、HACCPにおける基準は、最低限の基準、なので、別途80℃5分を作っておく必要があります。
そして、もっとも違うのは、品質基準は、94℃5分でも、十分食べられるし、品質的にはほぼ変わらないので、そのまま出荷可能ですが、HACCPで決めた基準の下、79℃5分だと、出荷できません。HACCPの基準は、食品安全の基準なので、そこを守らなければ安全性が保たれない、という話しになります。
品質と安全の基準を区別しておくことが大切です。
3.安全の最低基準は、マニュアルにも社員教育指導書にもなる
重要管理点を管理するための基準は、食品の安全を守るための基準です。
それ以下になれば、安全が脅かされて、食中毒になる危険が高まります。ただ、感覚的に、これではダメ、と言うより、数値化されていると分かりやすく、社員指導にも役立ちます。
日々の気温の変化などによって、微妙に加熱温度を変えたり、原材料の配合量を変えたりすることがあるかと思います。それらは、経験による職人技で、そう簡単には指導できないものですが、食品の安全性という点においては、最低限、これだけは守らなければならないという数値が必要です。
加熱温度を変えるにしても、食中毒にならない安全性が保たれた中で行う必要があります。
特に新人においては、その加減がわからない、といったこともありますので、まずは、誰にでも分かる数値化された安全性の基準を作っておくことが大切です。
4.まとめ
重要管理点(CCP)を管理するための基準は、食品の安全性を守るための最低限の基準です。それ以下になると食中毒になる危険が高まります。
品質の基準とは区別して、設定しておく必要があります。