知ってるようで知らない自社の商品~HACCP2番目と3番目の手順~

HACCPの7原則12手順の2番目の手順は、製品について書き出し、3番目の手順は、対象者について書き出します。
あなたは、自社の製品を知っていますか。
自社で作っているものだから、当然知っている、と答えるかもしれません。
でも、本当に全部知っていますか?
HACCPの工程の一つではありますが、この二つの手順は、経営にも十分生かせる手順です。
HACCPの手順全体については、こちらのブログをご参照下さい。
1.手順2の製品についての情報とは?
HACCPを始める前に、作っている製品に関して知っておかないと、どういった食中毒の危険があるのか、と想定することが難しくなります。そのため、製品について詳しく書いて表にしていきます。
表はエクセルなどで簡単に作成したものでOKです。
主に、こんな項目について書き出します。
製品の名称:これは分かりますね。
製品の特徴:どんな物か簡単に説明したものです。例えば、「牛肉に食塩、スパイスを加えて作るソーセージ」などです。
原材料、成分:例えば、牛肉(冷凍)とか塩、こしょうなどから包装材まで、全部書き出します。さらに、水分活性、酸性度など科学的に証明できるものを記載しておくと、食中毒の危険を考える時に役立ちます。食中毒の原因となる細菌の増殖は、水分活性(どれだけ水分を含んでいるか)、酸性度(酸性かアルカリ性かなど)でも変わってきます。水分活性が少ない食品であれば、水分がないと増殖できない菌は、危険度が低くなります。
賞味期限:製造後○○日間など。
食品の安全性特徴:添加物などの制限量など。
加工、調理の工程:どうやって作るかを詳しく書く。
流通、保管の方法:10℃以下など。
この他、自社で決めた基準があれば、それも記載しておくとHACCP計画の時に役に立ちます。例えば、牛肉は○○グラム以内とか、塩○パーセント以内などです。
2.手順3の意図される用途の特定
手順2で製品に関する物理的な情報を記入した後は、そのまま手順3へ進みます。
手順3では、その製品が、どうやって消費者に消費されるか、について書き出します。いわゆる、誰に売って、誰がどう食べるのを期待して販売しているのか、ということです。
なぜ、対象者を確認するのかというと、対象者によって、危険度合いが違ってくるからです。
例えば、子供が食べることを主に想定している場合、食中毒だけでなく、大きなものを飲み込めない、喉に詰まらせる、といった危険もあります。
逆に、高齢者が対象の場合も、子供と同じような危険に注意する必要があります。幅広く、ということであれば、一般消費者でも構いませんが、ここで、一度製品のコンセプトを見直すことができます。
さらに、重要なのは、製品の消費方法についてです。
そのまま食べられるのか、加熱して食べるのか、あるいは、そのままでも、加熱でも食べられるのか、といったことを書き出します。消費者の口に入るまでがHACCPなので、どういった食べ方をするのか、まで確認しておく必要があります。
3.HACCPでは準備段階の手順でも、経営には重要な手順
HACCPの手順2と3では、製品について、事細かく書き出す作業になります。
HACCP計画全体からすれば、これら二つの手順は、ほんの準備段階です。
しかし、この二つの手順は、経営上、とても大事な作業にもなります。
製品の売り上げが伸び悩んでいたり、製品の改善をしたいと思っていたり、消費対象を広げようと思った時に、まず、現状の製品がどうなのか、把握しないとできません。
各部門から代表が集まったHACCPチームでは、それぞれの部門から見た製品の特徴があります。それらを書き出し、まとめることで、新たに製品の特徴を見つけ出すことができるかもしれません。それによって、その特徴をPRしたり、これまでの消費対象を広げられる可能性もあります。
これまでは一部の技術社員の頭の中だけにあったデータが、書き出して見える化することによって、他の社員から、そのデータを活用した様々なアイディアが生まれる可能性があります。
伝える、見て覚える、という方法もありますが、製品の情報を棚卸しすることで、改善方法が見つかる場合もあります。
HACCPの見える化は、こんな所にも役立ってきます。
4.まとめ
HACCPの手順2と3は、製品についての情報をとにかく書き出す作業です。
製品を知る、ための作業ですが、書き出すことで製品の情報を棚卸しし、社員間での共有、改善アイディア、新たな広報へと広がる可能性を持っています。