HACCP(ハサップ)導入には、高額な費用が必要?


昨年6月に食品衛生法が改正され、HACCP(ハサップ)が制度化されました。その対象となるのは食品製造業者から飲食店まで様々です。
導入しなければならなくなった、とはいえ、気になるのが、導入のための費用。
一体いくらかかるものか、不安に思っていませんか?
お金がないから導入できない、というわけではないのが、HACCP(ハサップ)です。
実は、誰でもできる取組なのです。
1.食品衛生法が求めるHACCP(ハサップ)
1.1 HACCP(ハサップ)の認証と食品衛生法のHACCP(ハサップ)
食品衛生法が改正される以前から、HACCP(ハサップ)の認証制度というものがありました。
ISOなどと同様に、認証機関による認証と各自治体が独自で行うHACCP(ハサップ)認証制度があります。
食品衛生法が改正された現在も認証制度はそれぞれ存在しています。
それらの認証制度に関しては、事細かい基準があり、認証機関による認証においては、審査手数料がかかったり、コンサルタント料が発生したります。また、基準をクリアするために、新しい設備の設置や修繕なども必要になってくるケースがあります。
その一方で、食品衛生法が求めるHACCP(ハサップ)は、各業種においてそれぞれに合ったHACCP(ハサップ)の取組を求めており、認証は必要ありません。
そのため、新たな設備の設置義務や高額な審査料を払う必要もないのです。
もっとも、すでにHACCP(ハサップ)の認証を受けている場合においては、HACCP(ハサップ)の取組が行われているということになりますので、その時点で法律が求めるものはクリアしていることになります。
1.2厚生労働省が示すHACCP(ハサップ)への取組
厚生労働省は、各業界団体にHACCP(ハサップ)対応のマニュアルを作成させ、HPにて公開しています。
飲食業、製造業、スーパーなどの小売業など、各団体は、それぞれの業態の特性に合わせてHACCP(ハサップ)を取り入れる方法を作成しています。厚生労働省は、その業界団体のマニュアルを元に、取組をしているかどうかを判断するとしています。
そのマニュアルには、設備導入の義務などなく、当然、業界団体による認証の必要もありません。
もちろん、改善のために設備や備品の買い換えなどを行うケースもありますが、必ずしも何かを購入しなければならない、ということもないのです。
2 HACCP(ハサップ)を導入するのに最低限必要なもの
1.1 設備よりも人的要員の必要性
そもそもHACCP(ハサップ)で必要なのは、人、社長・店長をはじめスタッフ・従業員が必要です。これは、営業をする上でも重要ではありますが、HACCP(ハサップ)を導入する上でも重要な役割を果たします。
導入に必要なHACCP(ハサップ)計画から実践までは、食品製造や提供に関わっている従業員、スタッフが関わる必要があります。
現場重視であるHACCP(ハサップ)は、最新機器を入れたから何もしなくてもよい、というものではありません。人がチェックし、管理することによって、食中毒の危険を減らしていきます。
最新の設備や機械は、それらのチェックを助けてはくれますが、それだけでHACCP(ハサップ)を導入できるものではありません。必ず、人の手が必要になります。
1.2 HACCP(ハサップ)計画作成と実践を行う時間
複数の人が関わり、計画を立て、計画に沿った衛生管理を実践していきます。計画を立てるまでには当然時間がかかります。
さらに、計画を立てるだけでなく、実際に管理作業を行うスタッフ、それ以外の従業員などにも周知、教育する必要もあります。
また、HACCP(ハサップ)は途中で何度も見直しを行う工程が含まれています。そのため、1回の打ち合わせだけですぐに出来るというものではなく、何度も修正しながらやっていくため、ある程度時間がかかります。
新しい管理をする際には、スタッフ、従業員が慣れるまでの時間も必要です。費用として時間は考慮しておく必要はあります。
1.3 HACCP(ハサップ)の知識を持った人
導入をしようと思ったら、最低一人以上は、HACCP(ハサップ)のことを知っておかなければなりません。
厚生労働省がHPで公開しているパンフレットや、各業界団体が作成したマニュアルに沿ってやっていく必要があります。
HACCP(ハサップ)の特徴でもある危害要因分析(食中毒の原因となるものをリストアップすること)においては、食中毒の原因となる細菌などの知識が多少必要になってきます。
ただし、HACCP(ハサップ)の基本自体は、意外とシンプルで、実際には高度な知識は無くても誰にでも取り組める仕組みになっています。
3.設備投資が必要になるケース
3.1 古い冷蔵庫、壊れた機械、営業上最低限必要なものがない場合
冷蔵庫が古く、十分に冷えない、あるいは十分に加熱できない調理器具があった場合、HACCP(ハサップ)以前の問題ではありますが、そういう時には最低限の設備投資は必要になります。
さらに、保管庫が必要であるにもかかわらず、地面に置きっ放しにしている等の場合は、保管庫を購入する必要があります。
ただし、これらは、HACCP(ハサップ)導入のためというよりは、衛生管理状態の改善、食品を扱う営業上必要でもあります。保健所から注意や指導が入るような設備状態の場合は、早急に直しておく必要があります。
3.2 効率化を考えた設備投資
HACCP(ハサップ)制度化に伴って、さまざまな企業がHACCP(ハサップ)を支援するサービスを開発しています。
例えば、調理中の温度が記録できる調理器具や日々の記録をつけられるアプリなどが開発されてきています。
人手不足に悩み、効率化を推進している会社であれば、そういった道具の導入によって、少しでも人の手を使わず楽にすることができます。
業務改善も含め検討している場合は、設備投資もとても有意なものになります。
4.まとめ
HACCP(ハサップ)導入は、必ずしも設備投資が必要ではありません。
HACCP(ハサップ)で最も必要なのは、社長・店長を始めとする食品製造や調理にかかわる「人」です。
人件費という意味では、費用はかかるかもしれません。しかし、人は、HACCP(ハサップ)導入だけで終わりではなく、その後の売上向上などにも貢献してくれます。